日経生活面記事

(2/8)帰宅部OL増殖、ストレスで疲弊――アフター5はテレビ、土日も引きこもり…

 アフターファイブは流行のレストランで過ごし、休日は趣味で楽しむ――。OLのオフタイムは華やかなものと思われがち。しかし最近、こんな印象とは対照的に地味な私生活を送るOLが増えている。仕事から真っすぐ帰宅しクロスワードパズルやゲームに興じたり、土日は自宅に引きこもったり……。部活動に入らず家に直行する生徒のような「帰宅部OL」の生態に迫った。

 「私の生活、かなり地味かもしれない」。こう話すのは、派遣社員の小川恵子さん(仮名、26)。平日は、仕事が終わると自宅に直帰。午後6時半にはパジャマに着替え、家族とご飯を食べるのが日課だ。食事後、熱中するのはクロスワードパズルとテレビゲーム。うっかりすると、それだけで数時間が過ぎてしまう。
 横浜市のOL、河合順子さん(仮名、27)も、仕事が終わるとほぼまっすぐ家に帰る。その理由は「眠くなるから」。平日はテレビを見るのが趣味という河合さんだが、午後10時30分を過ぎると睡魔が襲ってくる。午後11時にはもう夢の中だ。「これでいいのかなあ」と思うこともあるが、友人同士、ドラマの話で盛り上がると「みんなもそんな時間に家でテレビを見ているんだ。よかった、私だけじゃなかったと安心する」。

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 アフターファイブはかなり地味――。リクルートの「ケイコとマナブOL総研」が20―34歳のOL300人に昨年調査したところ、こんな実態が出た。80%が平日に習い事をしておらず、スポーツも78%がなし。外食も「ない」が28%、「週1回あるかないか」が52%だった。
 では何をしているか。「テレビやビデオをみる」が77%と最多。家で過ごす場合は「オンラインゲーム」「ネットオークション」などが挙がり、外出派も「100円ショップによる」「駅前の本屋で立ち読み」と地味な場所が目立った。
 調査を担当したメディアプランニングディレクターの奥山真さんは「平日の夜があと2時間増えたらどうするか、との問いに『ぼんやり過ごしてしまいそう』という回答が多かったのに驚いた。これでいいのだろうかと思いつつ、現実にはあまり行動的でない姿が浮かび上がった」と話す。
 こんな現象は平日の夜だけではない。貴重な休日を、ひたすら自宅近辺に引きこもって過ごす女性たちの姿も目立つ。
 IT企業勤務の加藤さおりさん(仮名、34)は、土日は自宅にこもる。友人の大半が結婚し、土日に会える友人が激減。習い事でもと思うものの、疲れも手伝って面倒くさくなり、行かずに終わる。「流行のおひとりさまと言えば聞こえはいいが、実態はだらだらDVDを見たり寝だめしているだけ。『週末何してた?』と聞かれると、答えにつまる」と明かす。
 ヤクルトが一人暮らしのOLに実施した調査(1月発表)では、20代は余暇を恋人や友達と過ごすと答える回答が多いものの、30代になると「恋人と」が激減。かわりに「1人で過ごす」がぐんと跳ね上がる。
 中高校生で部活動に入らず、真っすぐ家に帰宅する生徒を「帰宅部」と称するが、地味な私生活を送る彼女たちは、「帰宅部OL」ともいえそうだ。ではなぜそんな女性が目立つのだろうか。

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 原宿メンタルクリニック(東京)の院長で精神科医の桑崎彰嗣さんは、「最近のOLは、職場のストレスで疲弊した結果、非常に保守的になっている。行動的になっても劇的にいいことがないのなら、家で自分の世界に引きこもった方がいいと考えがち」とみる。
 桑崎さんによると、情報過多の現代では、テレビやインターネットを通じて、旅行やグルメや習い事などの情報があふれ、簡単に疑似体験ができてしまう。「結末も予想がつき、わざわざ自分で体験しなくてもわかった気分になりがちで、行動を抑制してしまう」
 女性の雇用環境が厳しいことも拍車をかける。非正規雇用が働く女性の半数以上を占める現状では、「お金をたっぷり使える層と、懐が寂しい層の格差は開く一方。いいことがないなら、貴重なお金をつぎ込んでまで新しいことをする気はなくなる」(桑崎さん)。

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 だが、そんな私生活に満足な場合はともかく、「平凡な日常に孤独感や無力感を抱き、悩む女性も多い」と話すのは、女性の生き方に関する著述の多い作家の松原惇子さん。松原さんの元には「夢が持てない」「やる気が起きない」と訴えるOLからの手紙が増えている。
 松原さんは今のOL像を「不景気も手伝って、足元の安定を求める気持ちが強く、非常に現実的」とみる。「やることを思いついても、情報を仕入れて実現不可能だと思えばすぐちゅうちょする。でも人間は現実的になればなるほど憂うつになる」と松原さん。
 松原さんは、そんな20―30代の女性を対象に、今年から「夢マップ作り」の指導を始めた。夢マップとは、ボードに自分の夢を書きつらね、イメージ写真を張り付けて作る夢の見取り図のようなものだ。「夢を視覚化することで、もやもやした気持ちが整理される。行動しなくては、という気持ちになるのでおすすめ」と話している。
[日本経済新聞]

 

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