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自ら起業し、自分のやりたい仕事を形にしようと望む女性が目立ってきた。彼女たちは女性向けの起業塾を訪れ、事業計画を練って独立にチャレンジしている。起業はもはや遠い「夢」ではなく、女性の社会復帰やキャリアの到達点として実現できる「目標」に変化しつつあるようだ。
女性からの情報を企業向けに発信するマーケティングを手がける「トレンダーズ」(東京・渋谷)。2000年に起業した経沢香保子社長(31)は今秋、東京都内で女性を前に講演した。会場いっぱいに集まった女性に向け「すぐにでも起業して」と得意の「経沢節」を聞かせたところ、受講者が感激のメールを続々と寄せた。
「ノースリーブでブーツといういでたちの経沢さんを実際に見ると、とても親しみが持てた」と20代女性。「バリバリのキャリアウーマンのイメージだったけれど全然違った」との声も。「起業家」という言葉が醸し出す重厚なイメージとは違う雰囲気の経沢さんに、好感を抱いた女性が多かった。
互いに質問攻め
アパレル会社に勤める青山ゆきのさん(仮名、31)もそんな女性の一人。「衣料レンタル事業を始めたい」との思いを胸に、トレンダーズが主宰する「女性起業塾」に参加した。「どんな人が来ているのか、どんな事業プランなら起業できるのかを塾で目の当たりにできた」と納得顔。「雲の上の存在と思っていた『起業家』が等身大になり、具体的な目標に変わった」
トレンダーズが3年前に始めた「女性起業塾」は15回を数える。女性起業家が講師となって20人の受講者に自らのノウハウを伝授。受講者は自分が温めている起業プランを発表し、これに講師や受講仲間が厳しい質問を浴びせて計画を磨き上げるという形式だ。
発表される起業プランはネイルアートから情報技術(IT)関連ビジネスまで幅広い。「採算ラインはどの程度か、もっと市場を絞れないかなど議論の中でさらに具体的に詰める」(経沢さん)。青山さんのように会社に勤めながらひそかに独立を目指す女性も多い。
経沢さんは「起業塾に来る女性には2つのタイプがある」という。1つは結婚・出産を機に会社を辞め、子育てが一段落したころに得意分野を生かして会社を起こそうと狙う「社会復帰型」で、30代後半の女性に多い。もう1つは進学・就職の到達点として独立しようと望む「キャリア到達型」で、こちらは20代から30代初め。最近は「キャリア到達型」の受講者が増えている。
同志求める人も
一方、起業後に塾を訪れる女性もいる。「今まで脇目もふらずに働いてきたが、ここには同じ志を持つ仲間がいるからホッとする」と語るのは「シーティーエス東京」(東京・渋谷)の滝川奈穂社長(28)。滝川さんは海外で仕事をしたいと望む人にビザ取得や就労方法を伝授、海外生活を支援している。「就業経験もないまま米国に渡って苦労した私の経験を生かしたかった」という。
「自分が本当に望む仕事をするには、会社に就職するよりも自分で仕事を作った方がいい」とも。滝川さんは大学卒業後、語学留学とインターンを経て日本に戻り、24歳で起業した。社業は順調だが「一人で走り続けることには不安もあった」という。起業家女性の中には、滝川さんのように同志を求めて来る人も多い。
女性向け起業家セミナーはどこも人気だ。「女性と仕事の未来館」(東京・港)は4年前の開館当初から起業家セミナーを実施、独立を目指す女性を支援している。セミナーをきっかけに起業した女性が講師として後進を指導するという好循環も生まれ始めた。
卒業者の一人は出産を機に独立、シェアハウスという形で女性に安価な住まいを提供する「チューリップ不動産」(東京・中野)の水谷紀枝さん(34)。水谷さんは大手不動産会社に勤めていたが、出産前に人事部から「育児休暇をとってまで仕事に復帰するのは難しい」と暗に退職を促され、「それなら」と起業を決意したという。
水谷さんが一昨年「女性と仕事の未来館」の起業家セミナーを訪れたところ「私と同じような普通の人たちが聞きに来ていたので、自分にもできると自信がついた」。今は2歳の娘を連れ、新規契約を求めて物件を探し回っている。
水谷さんは今夏、未来館の起業家セミナー講師を依頼された。同館事業部の川口多津子さんは、「子供を抱きながら失敗談を交えて語る水谷さんの姿に勇気付けられた女性は多かった」と振り返る。身近な先輩の言葉が、起業を目指す女性を後押ししている。来年初めにはセミナー卒業者らで交流会を開くが、70人の枠に予約が殺到した。
あこがれ抱く?
営業のノウハウ本を出版、起業家セミナーで講師を務める「ペリエ」(東京・渋谷)の和田裕美社長は、「ここ1―2年で『起業家女性』が持つ良いイメージが社会に浸透し始めた」という。「特に若い女性は、客室乗務員やアナウンサーに対するのと同様、起業家に対してあこがれを抱いているようだ。なりたい職業のひとつに成長した」と見る。
自分がやりたい仕事を生み出し、仕事も生活も充実している起業家の姿は魅力的。失敗のリスクはあっても自由度の高い起業に、女性たちは実現可能な目標として照準を合わせているようだ。
[日本経済新聞]
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